【RIP SLYME 対バンライブレポート】盟友・後輩・恩人が集結!25年の絆が呼び寄せた奇跡の3夜!


25周年イヤーを全速力で疾走中のRIP SLYMEが、2月に東京・豊洲PITで対バンライブ「RIP SLYME presents BACK to BACK」を開催した。彼らが対バン形式のライブを開催するのは今回が初めて。ゲストは、2月2日がKICK THE CAN CREW、3日がCreepy Nuts、17日がDragon Ash。前半をゲスト、後半をRIP SLYMEが担う約2時間の構成で行われ、3日間それぞれに異なる熱と景色を味わえる特別なステージとなった。

初日を飾ったのは、RIP SLYMEと2カ月違いで2001年にメジャーデビューし、日本のヒップホップをメインストリームへ押し上げた盟友、KICK THE CAN CREW。共にFUNKY GRAMMER UNITに所属し、「同じ釜の飯を食ってきた」(RYO-Z)両者だが、実は対バンは初めてだ。超満員の豊洲PITに1曲目「千%」のイントロが鳴り響いた瞬間から大歓声が沸き起こり、続く「スーパーオリジナル」でフロアの熱は一段と加速する。

MCは「俺とRIP SLYME」というテーマで展開。KREVAは、FUMIYAが自身のユニットBY PHAR THE DOPESTでDJを務めてくれたこと、PESと同じ店で働いていたこと、その近くでRYO-ZやILMARIも働いていたことを振り返り、先輩Rock-Teeの家に行けばSUがいたと語る。「本当に同じ時代を生きてきた」という言葉が、この一夜を一層特別なものにしていた。この日掲げたキーワードは「Y2K」。2000年代初頭の楽曲を軸に据えたセットリストは、両者が“横綱”として並び立っていた時代の記憶を呼び起こすものだった。インディーズ期の名曲「ユートピア」や季節外れの「クリスマス・イブRap」まで投下されると、会場はまさに“時をBack”する空間に。ラスト「マルシェ」で《上がってんの?下がってんの?》と問いかければ、フロアは「上がってる!」の大合唱。初日にふさわしい熱狂を刻みつけた。

2日目に登場したのは、東京ドーム公演を成功させ、日本から世界へと射程を広げるCreepy Nuts。冒頭からフロアを一気に跳ねさせると、中盤にはDJ松永の超絶ターンテーブルルーティンへ。息を呑む高速スクラッチで会場の空気を掌握し、そのまま世界的ヒット「Bling-Bang-Bang-Born」へ雪崩れ込み、豊洲PITは大合唱に包まれた。

MCでは「対バン相手がKICKとDragon Ashと俺ら。1組だけファンが紛れ込んでる」と笑いを誘いながらも、「はらぺこあおむし」「阿婆擦れ」「Mirage」と、ヒップホップへの愛憎や自己像を描いた楽曲を並べ、自分たちのスタンスを提示。R-指定は、「RIP SLYMEもDragon Ashも、超アンダーグラウンドな人たちも全部を摂取して全部をアウトプットしているのが俺。その証拠に4年前に同じ場所でBAD HOPと対バンしてる。この振れ幅がヒップホップの面白いところ」と語り、世代や立ち位置を超えて繋がるヒップホップ精神を説いた。同じ4つ打ちでも、ディスコ/ソウル寄りのアナログな質感で身体を揺らすRIP SLYMEに対し、Creepy Nutsはテクノ/ハウス寄りのソリッドなデジタルビートでフロアを扇動。ラストの「のびしろ」まで、Creepy Nuts流のダンスミュージックの強度を見せつけ、観客を圧倒した。
最終日に登場したのは、RIP SLYMEにとって恩人ともいえる存在、Dragon Ash。1999年9月にDragon Ashが開催した「Total Music Communication」の2日目に、MIO、スケボーキング、m-flo、シャカゾンビと共にRIP SLYMEが参加。このステージをきっかけにRIP SLYMEはレコード会社との契約を勝ち取った。ライブは音楽に身を委ねる歓びを歌う「Entertain」で幕を開け、フロアには次々とダイブが発生。90年代後半の楽曲を畳みかけた中盤、「Ice Man」ではリズムを落とした間奏でRIP SLYMEの「One」を織り込む粋な演出も飛び出した。


後半はハイライトの連続で、まずは「Episode 4」でスケボーキングのSHIGEOとSHUNを迎え、続く「春夏秋冬」ではILMARIが登場。Steady&Co.の4人がステージを共にするのは実に25年ぶり。『CHAMBERS』リリースパーティー以来、実現してこなかった奇跡の再集結に、場内はこの日最大の歓声に包まれた。

そして、ダメ押しはDragon Ashの演奏によるRIP SLYMEの「JOINT」。メンバー全員がステージに揃い、同い年のFUMIYAとBOTSがスクラッチでBack to Backを繰り広げる光景も胸アツだ。演奏後、「俺の友達、かっけーだろ?」と誇らしげにRIP SLYMEを送り出し、「この先も、もしRIP SLYMEのライブが見たいと思ったら応援してあげてください」と深く頭を下げるKj。その姿からは、心の底からの敬意と愛情がにじんでいた。ラストは「PESくんと対バンした時に、ライブハウスでもう一回リップ全員でやれたらいいなって願ってた。最後に叶って嬉しい」と晴れやかな表情で定番曲「Viva la revolution」へ。ダンスミュージックで身体を揺らすRIP SLYMEと、メッセージを込めた楽曲で魂を揺さぶるDragon Ash。同じ時代を生き、支え合い、切磋琢磨してきた両者だからこそ生まれたこの夜は、四半世紀以上にわたる友情が交差した、かけがえのない一夜だった。

対バンライブの主役、RIP SLYMEのライブは、3日間通してライブハウスをダンスフロアに変える祝祭感に満ちた時間だった。すべての日で1曲目に置かれた「楽園ベイベー」はRYO-ZのヴァースでLeaders of the New Schoolの「Case Of The P.T.A.」をビートジャックするフェス仕様で演奏。そこからダンサブルなナンバーをクイックにつないでいく手法は、「DANCE FLOOR MASSIVE FINAL」で示した十八番のスタイルで、後半の「UNDER THE SUN」から始まる20分のノンストップメドレーは、否応なしに観客のテンションをぐんぐん挙げていく。今回の対バンライブは、春夏秋冬のフェスと8年ぶりとなった全国ツアーの旨味を凝縮したスペシャルな構成。さらに3日間で曲目をマイナーチェンジして、2日目と3日目の前半には「STEPPER’S DELIGHT」をプラス。メドレーの締めとなる曲も1日目は「ブロウ」、2日目は「HOTTER THAN JULY」、3日目は「Tokyo Classic」と、異なるメニューで観客を楽しませるサービス精神にあふれていた。

各日でゲストが異なるだけに、RIP SLYMEのMCも日ごとに変わっていく。初日は「俺とKICK THE CAN CREW」というテーマでトークを展開。SUは「MCUは昔からよく飲みに行ってたけど、声がちっちゃい(笑)」と暴露し、RYO-Zも「LITTLEも飲めば飲むほど声が小さくなる。こっちはデカくなるから何にも聞き取れない。でも3回以上は聞き返さないようにしてる。八王子の血が騒ぎだすかもしれないから(笑)」と畳みかける。PESは西麻布YELLOWでKREVAに声をかけられたものの、その後フリースタイルが始まり「帰ろうかなと思った」と当時を回想。ILMARIも「俺らは“はじめよっか、はじめよっか”ってずーっと言いながら始めない(笑)」とフリースタイルの思い出を語り、対照的なスタンスを笑いに変えた。FUMIYAはBY PHAR THE DOPESTでのバックDJ時代を振り返り、「KREVAくんはカチッとしたルーティンを作る。“ダメ、FUMIYAもう一回”って。厳しかったけど、それで鍛えられた」と回顧。当時インタビューでKICK THE CAN CREWをどう思うかと聞かれるたびにPESが「やる気が違う。彼らは勝つ気でやってる」と答えていたことも明かされると、RYO-Zが「俺らはニコニコやってる(笑)」と即答。対照的な個性で互いを刺激し合ってきた歴史と、それぞれの美学の違いが、笑いに包まれながらもくっきりと浮かび上がっていた。

2日目のMCタイムは、Creepy Nutsとの世代差がテーマ。RYO-Zは「楽屋でライブを観てて、もう俺たちやらなくてもいいんじゃないかって話してたら、スタッフに“怖じ気づくおじさんたち格好悪いっすね”って言われた(笑)」と打ち明け、会場を和ませる。PESは、Creepy Nutsが自分たちの世代を「平成一桁ガチジジイ、ガチババア」と表現していたことに触れ、「僕らは昭和二桁マジオジイ」と返し、この日一番のパワーワードで爆笑をさらった。そんなPESはCreepy Nutsのライブについて「セトリが仕上がってる」と評価。「去年のKアリも良かったし、前のアルバムと今回のアルバムは全然違う世界観。不器用なのか器用なのかわからない人たち」と語りリスペクトを見せる。FUMIYAも「松永くんの後にスクラッチしたくない。(三角巾で腕を吊るポーズをしながら)骨折したときみたいに出てこようかなって思った(笑)。だって世界一ですよ」とDJ松永のスキルに最大級の賛辞。そこから二人が共にチャンピオンであることに話題が及ぶと、FUMIYAが「だからRYO-ZくんもR-指定くんとフリースタイルバトルを」と振るが、RYO-Zは「いやいやいや!ないないない!」と全力で否定。「KREVAにもフリースタイルの“フ”の字も言わなかったんだから!」と畳みかけ、笑いをさらっていく。茶化しながらも、今のシーンを牽引する後輩の実力を真正面から受け止めるRIP SLYMEの姿が、はっきりと浮かび上がった。

3日目のMCは、Dragon Ashとの交流をたどる内容だ。冒頭、RYO-ZはDragon Ashのライブを振り返り「暴れすぎですよ」と苦笑。「けど、今日はナメられるわけにはいかないでしょ」と意気込みを語ったが、PESが「楽屋ではかなりなめられてる」と即座に突っ込む。それを受けてRYO-Zは、1999年のTMCの楽屋ですでになめられていた話を披露。ロックボーカリストであるKjに喉のケアについて相談したところ「向いてないです」とあっさり返されたエピソードを明かし、「その悔しさを糧に25年やってきました。ある意味Kjくんのおかげ」と笑いに変えながらも両者の距離感の近さを示した。さらに本編ラストのMCでは、RYO-Zが「1999年、赤坂BLITZで最初のTMCが開催されて、まだまだインディーズの僕たちを呼んでくれた。2000年にはまだこれからというバンドを連れて全国ツアーをやってくれた。100人以上の大移動を全国に展開したんです。それで今のミクスチャーシーンやヒップホップシーンがあると思うし、彼らのおかげでデビューできた。彼らがいなかったら僕らはここにいません」とDragon Ashへの感謝をまっすぐな言葉でメッセージ。ユルさが味のRIP SLYMEだが、音楽に対する実直さと真面目さがくっきりと表れたMCだった。
そして、この対バンライブ最大の見せ場となったのが、3日間それぞれに趣向を凝らして用意されたアンコールだった。1日目のアンコールは、「今日はここでしか見られないやつをやります!」というRYO-Zの呼びかけからKICK THE CAN CREWのバックDJを務めていた熊井吾郎を呼び込み、まずは熊井のMPCとFUMIYAのスクラッチによるセッションを披露。そこからKICK THE CAN CREWを呼び込み、FUNKY GRAMMAR UNITの先輩、RHYMESTERが日本語ラップ史に刻んだクラシック「B-BOYイズム」のカバーがドロップされた。


マイクリレーのトップバッターはKREVA。《それじゃ相棒、B-BOYのBを定義してみな》の後はSUが《 決して譲れないぜ この美学》と低音でドロップし、2ヴァース目はRYO-Z、ILMARI、MCU、PES、3ヴァース目はLITTLE、RYO-Z、ILMARI、PESでマイクリレー。パフォーマンスを終えるとILMARIは「すごい楽しいカラオケ(笑)」と笑顔を見せ、KREVAも「6回はいける(笑)」とご満悦の表情だった。興奮が収まらないなか、KICK THE CAN CREWを送り出したあとは、「JOINT」でフィニッシュ。SUのパートでは往年のHIP HOPチューンをビートジャックする仕様で、初日から“最大級の特別”を叩き込んだ。
2日目のアンコールは、より即興性とヒップホップ感が前面に出た展開だった。RIP SLYMEのみで「JOINT」がスタートし、SUパートの「Stop!」で演奏がストップ。「Back to Backですから。今、僕らのヴァースを蹴りましたよね?」と煽ると、期待の高まりの中でCreepy Nutsの二人が登場する。PESはR-指定に「タオルあげる」と渡して、SUは「髪とかしてあげる」と「最大級のサービス」(RYO-Z)でおもてなし。R-指定が「RS5とCreepy Nutsでジョイントしちゃってもいいですか!」と呼びかけると大歓声が上がり、一時停止していたビートが動き出す。

R-指定はこの日の感想を4小節のフリースタイルでキックし、そのままDJ松永のスクラッチへ。FUMIYAも応戦し、世代もスタイルも異なるDJ同士によるスクラッチ・セッションが展開された。
最終日は、構成そのものが特別だった。本編ラストの「One」が始まったと思いきや、最初のPESパートの途中でDragon AshのKjが登場。その流れでKjはサビをメインに歌い、コラボの一瞬一瞬を噛みしめるようにパフォーマンス。

前2日とは異なり、アンコールを待たずにクライマックスが訪れる形となった。その余韻を引き継いだアンコールでは、RIP SLYMEの5人が「私とドラゴン」というテーマでトークを展開。ILMARIは「本番2日前に『春夏秋冬』やるって言われた」と衝撃の舞台裏を明かし、「昨日は一日中、Comin’ upって言ってた」と場内を笑わせた。和やかな雰囲気からアンコール1曲目は「黄昏サラウンド」を披露。ラストは「黄昏れて終わるのもいいけど、今日の思い出を刻んでほしい。熱い熱い夜にしましょう!」というRYO-Zの曲紹介から「熱帯夜」がドロップされた。アウトロでは、桜井誠とBOTSに加え、かつてDragon Ashに在籍していたATSUSHIやDRI-Vも飛び入り。全員でワチャワチャとしたRIP SLYMEらしい雰囲気で大団円となった。

最後にRYO-Zは、「Dragon Ash、スケボーキング、KICK THE CAN CREW、Creepy Nuts、そしてこのイベントに3日間に参加してくれたすべてのオーディエンスにピース!ありがとう!またどこかで!」と挨拶。会場にはRIP SLYMEがプレゼントしてくれた奇跡のような祝祭を名残惜しむ拍手が大きく鳴り響いていた。
こうして3日間にわたる対バンライブ「BACK to BACK」は、それぞれに異なる化学反応を起こしながら、賑やかな余韻を残して幕を閉じた。盟友、後輩、恩人――相手が変わるたびにステージの空気も自然と変化したが、そこにあったのは、25年のキャリアを経たいまも変わらず音楽を楽しみ続けるRIP SLYMEの姿だった。そんな彼らの先には、“終着点”が見えている。3月20日・21日・22日にTOYOTA ARENA TOKYOで開催されるファイナルライブ「RIP SLYME 25th Anniversary GREATEST LIVE – Final Three Nights –」は、生配信・生中継、さらには全国の映画館でのライブビューイングも決定。25周年イヤーの集大成をあらゆる形で共有できる場となる(ライブ配信に関する詳細はこちら)。
ここまで走り抜けてきたRIP SLYMEが、最後にどんな景色を見せてくれるのか。その答えは、ファイナルのステージにしかない。その瞬間を見逃すな。
文/猪又 孝
写真/砂流 恵介