【ライブレポート】「DANCE FLOOR MASSIVE FINAL」圧巻のファイナル公演! 楽しさ全開!興奮MAX!熱狂渦巻くRIP SLYMEの真骨頂!

約8年ぶりに5人で再集結したRIP SLYMEが、全国ツアー「DANCE FLOOR MASSIVE FINAL」のファイナル公演を11月15日(土)、Zepp DiverCity(TOKYO)で開催した。10月3日(金)にスタートして全国7会場を巡ってきた今回のツアーはこの日で12本目。「まさかまたRIP SLYMEを生で見られるなんて!」という喜びを各地に届けてきた彼らだが、5人は観客の熱烈ウェルカムな姿勢に甘えることなく、回を重ねる毎にセトリや曲間、立ち位置などを細かくブラッシュアップさせてきた。そんなツアーの総仕上げとなるこの日のライブは、終始、観客とステージが一体化した素晴らしいものに。アンコールを含めて30曲以上、約2時間半にわたってヒット曲や代表曲を繰り出したライブは何度も熱狂のピークを迎え、生配信を通して鑑賞したオーディエンスにさえ、会場の熱狂と“RIP SLYMEのライブはヤバいぞ、楽しいぞ!”ということを伝える、らしさ全開のステージだった。

この日の開演時刻は18時。正面スクリーンで恒例のカウントダウン演出が始まった。興奮で固唾を吞む観客。静かに高まっていく鼓動。場内が暗転し、「…7、6、5、4、3、2、1」。画面に合わせて一緒に秒読みする観客の声が大きくなっていく。スクリーンには空から降ってくる4本のマイクと1台のタンテが投影。最後にデッカいラジカセが落ちてきてスクリーン一杯に広がる。そのラジカセにツアータイトルと会場名が書かれたカセットテープがセットされると「マタ逢ウ日マデ」のイントロが鳴り出した。DJブースにはFUMIYAのシルエットが浮かび、ステージ上手からは「Yo! Ready!」とRYO-Zが登場。続いてPES、SU、ILMARIが現れ、「マタ逢ウ日マデ」が始まった!……と思ったら、歌い出しの“鐘を鳴らそう”のところでストップ。どよめくフロアに向けてRYO-Zが「RIP SLYME is Back!」と力強く宣言すると、その声を合図に再集結の狼煙を上げた「どON」がスタート。イントロに乗せて他メンバーが「東京〜」(PES)、「最後だぜぃ」(SU)、「DANCE FLOOR MASSIVE〜!」(ILMARI)と順に発すると、「待ってましたー!」という観客の興奮が大歓声に変わってうねりをあげる。5色のブレスライトがフロアでカラフルに揺れる中、いきなりピークのような熱狂が渦巻いてライブ本編が始まった。

続いてはメジャーデビュー曲「STEPPER’S DELIGHT」。25年前に時計の針を巻き戻しつつ、スクリーンでは現在のバカボン風アニメキャラが右に左にドタバタ走り回る。オリジナル通りPESのヴァースで始めて、最後のフックは「STEPPER'S DELIGHT (2025 ver.)」のリリックで締めるという小技も効いている。興奮が渦巻くなか、次は「Super Shooter」へ。「今日はとことんダンスミュージックをお前ら全員にぶちこんでやる!」(RYO-Z)という煽りから1コーラスだけ披露したところで、今度は「SPEED KING」をお見舞い。軽快なロックンロールで5人は快調に飛ばし、会場のボルテージを上げていく。熱気が天井知らずに高まっていくなか、次に繰り出されたのは「熱帯夜」。2階席にいた筆者のところまで1階の熱気が立ち昇ってくるほど、フロアは大興奮状態だった。

続くMCでRYO-ZはDANCE FLOOR MASSIVE(以下DFM)について「ダンスミュージックを爆音で最高な音でかけて、ガンガン最後まで踊り倒す。ライブハウスをダンスフロアに変えてしまおうというライブ」だと説明していたが、実は前日のセミファイナルでは、この最初のブロックからセトリが違う。前日は「Super Shooter」「SPEED KING」のところで「雑念エンタテインメント」、「熱帯夜」のところで「楽園ベイベー」がプレイされていた。前日は前日でオープニングから初期ヒット曲連発という嬉しさがあったが、“ひたすら騒ぎまくる”というDFMの醍醐味を感じられたのはヤバいくらいに疾走感があったこの日のセトリだろう。
ちなみに過去すべてのDFMでRIP SLYMEはセトリを数パターン用意している。今回もAパターン、Bパターンが用意され、当初はそれを日替わりでパフォーマンス。Aパターンは途中の名古屋公演から「FRESH」に変わって「雑念エンタテインメント」が入り、さらにセミファイナルとファイナルだけでお披露目された楽曲もあるので、Aが3パターン、Bが2パターンの計5パターンのセトリが披露されたことになる。

「FUNKASTIC」から始まった次のブロックもDFMらしさ全開。けたたましいファンクで観客の心と体を踊らせたあとは「ブロウ」で爽やかな風を運んでいく。しかも、この「ブロウ」ではPESが両手にマイクを持つという珍しいスタイルでパフォーマンス。「FUNKASTIC」で“左手に持つM.I.C”と歌うように通常は左手のマイクを使い、ロボ声やオートチューンなどエフェクトボイスを使うときは右手のマイクで歌うという器用ぶりを発揮していた。続く演目は「Bubble Trouble」(前日は「RUN with...」)。「Go! Go!」とPESが裏拍で煽り、観客を小刻みにジャンプさせたあとは、「JUMP」でさらに高くジャンプさせていく。両曲の途中にはFUMIYAがマイクを握ってラップするという場面も。そしてRYO-Zの「高いジャンプを見せてくれたあとは、この曲で俺たちと繋がってもらってもよろしいでしょうか?」というイントロ乗せから必殺のライブ定番曲「JOINT」へと雪崩れ込む。この「JOINT」ではSUのヴァースに出てくる“STOP”という歌詞に合わせてメンバーが動きを止め、何かをやるのがRIP SLYMEライブの恒例儀式。今回のツアーでは各地でSUが復帰できた感謝を伝えてきたが、この日は一層真面目なトーンで「おかげさまで、また5人でやることができました」としみじみと挨拶。観客から歓迎の気持ちを込めた大きな歓声と温かい拍手がおくられた。続けてSUは動きを止めたままのメンバー1人1人に「ありがと」とつぶやきながらおじぎしていき、最後は観客に向けて「ありがと」とお礼。そのSUの姿に「こちらこそ5人揃ったRIP SLYMEを見れて感謝です」というような気持ちが胸いっぱいに広がり、目頭が熱くなったファンも多いのではないか。

「JOINT」でタオルをぶん回したあとは、熱くなった身体をクーリングするMCタイムへ。今回のツアーのMCではFUMIYAの未発表トラックがBGMに使われていて、そういう細かいところにもファンを喜ばせるおもてなしが用意されていた。さらに過去のRIP SLYMEのライブではFUMIYAがMC中のメンバーの会話をその場でサンプリングして楽しむという時間があったのだが、今回もその遊びを実施。RYO-Zが高校2年生のときにILMARIから声をかけられてRIP SLYMEが始まった的なくだりからILMARIが「電話してきたの、そっちだからね」と返し、RYO-Zが「あ、そうでしたっけ?」と折り返したところでサンプリング発動。2人の会話をFUMIYAがチョップして、SUがMPCでビートを叩き、PESがサンプラーで音を加える。ここでしか聴けないRIP SLYMEの新曲「電話してきたの、そっちだからね」の完成だ(笑)。さらにこの日は、久しぶりのツアーは楽しかったという話題からPESが発した「今日も楽しんでいきたいと思うぞ!」をサンプリング。本日2曲目の新曲「今日も楽しんでいきたいと思うぞ!」が爆誕するというボーナスもあった。

MCで、ゆるくて愉快な5人の姿を見せたあとはリラックスセクション。最新曲「Chill Town」を皮切りに、「黄昏サラウンド」(前日は「Dandelion」)、「One」と名曲を続けていく。美しい「One」の調べに観客が酔いしれたのもつかの間、スペシャルゲストのWISEとおかもとえみを呼び込み、スムーズダンサーなミッド曲「サヨナラSunset feat. WISE & おかもとえみ (RS5 Remix)」へ。「One」の余韻をぶった切るくらいの勢いで足早に展開させていくところは、ダンスに特化したDFMならではのステージ運びだ。その後はディスコ調の「SLY」でさらにテンポ感をアップ。ライブ後半に向けて徐々にフロアの温度を上げていく。

そして、ここからが今回のDFMのハイライト。RYO-Zの「ここからDANCE FLOOR MASSIVEの真骨頂。ここから一切止まりませんけど大丈夫ですか?」という呼びかけから、WISEとおかもとえみを交えたまま、およそ30分にわたるノンストップメドレーが繰り広げられた。「Don’t Panic」から始まったメドレーは、新旧のライブ定番曲をほぼ1コーラスずつクイックに繋いでいくスタイル。しかもBPMが徐々に上がっていく仕掛けになっているし、1コーラス程度のパフォーマンスでもヴァースを歌う人間が偏らないように実に良く練られている。さらに、RYO-ZとPES、そしてWISEはサイドMCとしても抜群に優秀で、短いイントロや曲間、ヴァースのちょっとした合間に、次にラップするメンバーの名前を呼んだり、煽りを入れたりして、途切れることなくテンションを上げ続けていく。演出面でも途中の「SCAR」では7人が光るサングラスを着用し、ミステリアスな雰囲気を創出。ビート感が違う「SCAR」を途中にカットインすることでメドレーの雰囲気を一旦変え、その後の「ジャングルフィーバー」に繋いでいくFUMIYAのDJセンス/テクニックにもあらためて脱帽した。そして終盤の「Good Day adidas Originals remix by DJ FUMIYA」「Good Times」の四つ打ち連打でフロアを尋常じゃないほど盛り上げると、PESが“あなたの思い出を総取り”という「Good Times」のリリックを変え、“みなさんの思い出を総取り……したのはこの2人〜」とWISEとおかもとえみをスムーズに送り出す。と同時に、次曲「HOTTER THAN JULY」のイントロが鳴り出し、文字通り、フロアを夏より熱くさせてメドレーを締めくくった。この「HOTTER THAN JULY」は、セミファイナルとファイナルだけに取り入れられた楽曲で、前日はアンコールで披露。それまでメドレーのトリは「UNDERLINE No.5」だった。それもそれで懐かしい曲が聴けてファン歓喜だったと思うが、この日の「HOTTER THAN JULY」への展開は本当にシームレスでお見事だった。PESの送り出しもタイミング抜群だったし、(当たり前だが)ちゃんと前曲から繋がるようにBPMも早めてパフォーマンス。各地を沸かせてきたこのノンストップメドレーは、「HOTTER THAN JULY」で締めたこの日のパターンで、ひとつの完成形を見たと言って過言ではないだろう。

怒濤のメドレーで興奮さめやらぬフロアに向けて、RYO-Zは感謝の挨拶。「僕らもマッシブしきったなと思うんですけど、それはみんなが一緒に最後まで熱い声を張り上げて、ファンクサインを出して、ジャンプして、タオルを回して、すばらしいマッシブにしてくれたからだと思います」と伝えると、観客からも感謝のお返しのような拍手喝采が起こる。そして「最後にもう1曲」と告げてライブ締めの定番曲「Wonderful」へ。最後はDJブース上の2階部分に上がった5人が横一列に並び、再集結前のライブで何度も見せてきたラインダンスを披露し、ハートウォーミングなムードで本編を終えた。

鳴りやまない手拍子に迎えられて始まったアンコールは、「まさかこの曲が聴けるなんて」という懐かしい楽曲「By The Way」からスタート。FUMIYAがアナログレコードで生み出す超絶スクラッチビートに乗せ、クラシックなHIP HOPスタイルで4人がマイクをリレーしていく。続いて「楽園ベイベー」のイントロが始まると観客は大歓声。RIP SLYMEの名前を全国区にしたヒット曲で会場をひとつにしたところで、最新ベストアルバムに収録された最新曲「結果論」へ。場内がエモいムードに包まれてアンコールを終えた。
舞台袖にメンバーが下がったと思ったら、「本日の公演はすべて終了……しましたか?」というロボ声で影ナレが流れ出す(声の主はおそらくRYO-Z)。続けて「何か忘れてることがあるような気が、しないでもない。そういうことなら……もうちょっとだけお邪魔してもよろしいでしょうか?」と会場に投げかけると、大きな歓声が沸き上がり、すぐさま5人がステージに再登場。ダブルアンコールとして「マタ逢ウ日マデ」を今度はフルでパフォーマンスした。最後は照明を全灯させて会場を真っ白な光で包み込むRIP SLYMEライブ恒例の演出で締め。パフォーマンスを終えた5人はステージ最前列に並び、大きな拍手が送られるなか、万歳するように手を上げて、その後は深々とおじぎ。今回のツアーを噛みしめるような表情をしながら最前列の観客と握手したり、ハイタッチしながらステージを後にした。

5人が去ったあとの正面スクリーンには、この日のセトリが映画のエンドロールのように流れ、「RIP SLYME are」というクレジットに続いてメンバー個々の写真が映し出されていく。FUMIYA、RYO-Z、ILMARI、PESと来たところで、ラストのSUは名前の横に「(友情出演)」と書かれていて最後まで笑いを誘う。かと思えば、次に「and YOU」と現れて感動と拍手を誘う。そして最後の最後は、いつかのライブでも見た「ADIOS!」の文字。久しぶりに5人が集結したDANCE FLOOR MASSIVE FINALは、RIP SLYMEお決まりの締め方で懐かしさに心をくすぐられ、千秋楽の幕を閉じた。
このツアーファイナル・11月15日(土)Zepp DiverCity(TOKYO)公演は生配信も行われていた。11月24日(月・祝)までの期間限定で配信アーカイブも視聴可能となっているので、お見逃しなく(配信に関する詳細はこちら)。
ちなみに、配信では流されていないが、このエンドロールの際に全会場でBGMに使われていたのはニール・セダカの「Laughter In The Rain」という楽曲。FUMIYAが選曲したそうだ。「雨に微笑みを」という邦題でも知られるこの曲は、雨(苦難)が続いていても大切な人と出会ったことで笑顔になり日々が輝き始めるという内容。ニール・セダカは50年代末から60年代初頭にかけてアメリカンポップスの旗手として活躍した歌手だが、この曲で長いブランクを乗り越えて13年ぶりに1位を獲得し、シーンにカムバックを果たした。そんなエピソードは今回のRIP SLYME再集結にどこか重なるものがある。この話を知って今回のツアーを振り返れば、あなたが参加した思い出のライブがまた別の感動を持ち始めるかもしれない。
今回のツアーでは、お得意のダンスミュージックつるべ打ちスタイルで真骨頂を発揮したRIP SLYME。次は12月24日(水)・25日(木)にZepp Haneda (TOKYO)で開催される「GREATEST CHRISTMAS」だ。クリスマスライブは彼らがメジャーデビュー前年の2000年から毎回コンセプトを設け、これまでに15回行ってきた恒例企画。ツアー形式だった2016年の「Christmas Trip」以来、9年ぶりの開催となる。果たして今回のクリスマスライブはどんな企画が用意されているのか。25周年イヤーを突っ走るRIP SLYMEのお楽しみはまだまだ続く。
文/猪又 孝
写真/鳥居 洋介、野口 みみ